「エンディングノート」と聞いて死をイメージする方がほとんどだと思います。しかしエンディングノートは「死に向かう」ためのものではありません。自分の人生を振り返り、自分を見つめ直し今後に生かすために頭を整理する、とても便利なツールなのです。
しかし、エンディングノートという言葉は知っていても、「具体的にどのような物か」「どう書けば良いのか」を理解している人は多くありません。エンディングノートを知っていても実際に作成している人は少数です。
ここでは、そのエンディングノートの「書き方」や「書く内容」、書いた後の「管理方法」などを、わかりやすくご紹介します。
エンディングノートに書く内容は、決まりが無いので自由に書いて構いませんが、これだけは書いておいた方が良いと思う、おすすめ11項目を紹介します。
1、本人の基本情報
2、医療情報
3、財産・資産について
4、家族・親族へのメッセージ
5、親しい友人・知人について
6、医療・介護の希望
7、葬儀・お墓の希望
8、相続・遺言書について
9、死後の様々な手続きについて
10、過去の記録・思い出
11、もしもの時の連絡先
・氏名
・生年月日
・本籍地
・現住所
・固定電話番号
・携帯電話番号
・血液型
・家族構成
・家系図・学歴
・職歴、資格
・自分史
・マイナンバー
・運転免許証番号
・健康保険証番号
・性格、信念
・人脈、仲間
・趣味・特技
上記の情報は、万が一の時に各種手続きを始めるのに必要な情報です。本籍地をはじめ、自分にしか分からない基本情報を書くことで、万一の時に家族が一目瞭然で助かります。今は理解していても、あらためて聞かれると、家族も記憶が曖昧なことは多々あります。既に亡くなっていたとしても、実の両親や兄弟、別居している子供・孫までを書いておくと便利です。また、家族構成は入院の際に病院から尋ねられることがあります。
・身長、体重、血圧、血液型など
・かかりつけ医
・持病、既往歴、常用薬、アレルギー
・健康保険証の情報
・介護保険証の情報
・臓器提供の意思表示
病気になった時に備えて、現在の健康状態や緊急時にどの様な対応を希望するのかについて、普段から整理しておかなければなりません。
・預貯金の情報(金融機関名、支店名、口座番号、通帳・印鑑・カードの保管場所)
・金庫などに保管している現金
・不動産の情報
・金融商品の情報(株式、投資信託など)
・その他資産(ゴルフ会員権、貴金属など)
・貴金属
・骨董品など価値のあるコレクション
・生命保険の情報
・損害保険の情報
・年金の情報
・クレジットカードの情報
・借金、ローンの情報
年金証書や保険の証書、介護保険証や健康保険証、通帳・印鑑、貴重品などの保管場所は家族であっても知らないケースがほとんどなので、エンディングノートに記載しておくことが重要です。しかし、エンディングノートの盗難や紛失など、万が一の場合の想定も必要なので、銀行口座の暗証番号などは「別の場所に保管する」等々の防犯対策も考えましょう。借金も相続財産となるため、正直に書いておきましょう。
普段、面と向かっては伝えられない家族への感謝の言葉を文章にしておきましょう。子供や孫に対しては、小さかった頃のエピソードを伝えるのもお勧めです。
デジタル時代ですが、あえてプリントした写真を一緒に保管することで、家族との思い出をすぐに振り返ることができます。
友人や知人、日々お世話になっている方々への感謝の言葉を綴って、日頃言えなかった「ありがとう」の気持ちを残しておきましょう。思い出の写真を一緒に保管しておくと良いでしょう。
医療や介護に関する内容はよく話し合う事が大切であり、末期の状態になった時、家族は延命措置などの決断を迫られます。冷静に判断できる状態の時に、家族と話し合った内容をエンディングノートへ記載しておきましょう。
また認知症などで意思疎通ができなくなった場合に備えて、「誰に介護して欲しいか?」「施設への入所を希望するのか?」なども考え、記載する必要性があります。
エンディングノートに遺産分割の方法を記しても法的拘束力はありません。従って、エンディングノートには「遺言書の有無」を記しておくことが大切です。家族同士でトラブルにならないよう遺言書を作成している場合は、「どの様な形式なのか?(自筆証書・公正証書・秘密証書)」「保管先の記載」「専門家に依頼した場合はその連絡先」を記録しておきましょう。
市販されているエンディングノートの大半は、自分史の作成に多くのページが割かれています。今までの人生を振り返ることは、残りの人生をさらに充実して行くためにも大切なことです。家族旅行などの記録やエピソードを中心に、「思い出」「気持ち」を写真を添えて残しましょう。
自分の親族や親しい友人の連絡先を記入しましょう。
普段からよく見かける人でも、家族にとっては詳しい交友関係が分からず、連絡先を知らないことが多くあります。亡くなったことを連絡して欲しい人がいる場合は、その旨記載しておくことをお勧めします。
エンディングノートを買ったものの、いざ書こうとすると中々筆が進まないものです。
あまり難しく考えず、以下のポイントを参考にして書き始めることをお勧めします。
エンディングノートは書き込む内容も豊富でページ数も多く、全部の項目を埋めるのは見るからに大変です。なので、まずは書きやすい項目から埋めていきましょう。
最初から順番通りに埋める必要はありません。気軽な気持ちで、最初の一歩を踏み出すことが大切です。
書きやすい項目から書き進め、埋まってくるにつれて段々内容に困り、やがて筆が進まなくなってくると思いますが、最終的に全ての項目を埋める必要はありません。人によっては必要の無い項目もあるかも知れません。また、書きたい内容であっても最初は考えがまとまらず、満足した内容が書けないこともあるでしょう。
エンディングノートは、一回で完璧な物を作るより、「書きたい内容が思い浮かんだら書いてみよう」くらいの気軽な気持ちで書き始めるのがお勧めです。
また、書いた後に考えが変わったり、情報の更新が必要になる項目もあります。いつでも書き直せるように鉛筆で書くのも一つも方法かも知れません。
作成したエンディングノートには、個人の大切な情報が記載されているので、簡単に見つかる場所に保管するのは避けましょう。しかし自身の死後、誰にも見つからなければ元も子もありません。まして見つけるのに苦労する場所だと、いざという時に誰にも見つけてもらえない恐れがありますので、信頼できる家族・親族には存在を教えておくのも良いかも知れません。
エンディングノートは書いたら終わりというわけではありません。時間が経過するうちに、エンディングノートに記載した内容の修正や追加が必要になる場合もあるでしょう。せっかく作成したエンディングノートの情報が古いままでは、いざという時に役立たなくなることがあるため、最低でも1年に1回、心境や状況の変化に応じて定期的な見直しを行いましょう。
おわりに、再度大切なことをお話しします。エンディングノートと遺言書の決定的な違いは、法的効力があるかないかです。どちらも遺産相続などについて希望を書くことができますが、遺言書の内容は法的に強制力があり、エンディングノートには法的な強制力はありません。
エンディングノートは遺言書のように決められた事柄だけに縛られることなく、自由に自分の意思や希望を書き留められます。しかし子供の居ない夫婦・内縁の夫婦・再婚や養子が居るなど、家族関係が複雑な場合は、法的に認められる遺言書を書くことによってトラブルを回避し、自身も安心が得られると思います。
エンディングノートとは、終活をする中でこれまでの人生を振り返り、ご自身の価値観やご家族・周囲の人への想いなどを整理することを目的に作成する備忘録のことです。
記載方法や形式は定められていないので、ここでご紹介した項目の中から必要なものをピックアップして、自分好みのエンディングノートを作ってみてください。難しいなと思ったら、街の本屋さんやネットショップでは様々な種類のエンディングノートが市販されています。それらを活用することで、終活の第一歩を踏み出してみてください。